11月29日〜12月23日
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★11月29日
昨日、オレが愛用しているアップル社のIBOOKがパンクした。この日記を書いてリターンキーを押した途端、デスクトップ画面が真っ暗になりデオデオまで持参しても回復せず、アップルの修理工場に入院ということになった。年内には戻る予定だけれど、この日記のホームページへのアップが当面無理になった。
もっともPCは他2台あるので日記は書き続けられる。今使用しているのはアップル社のimac。
で、和ちゃんも風邪気味。熱は普段より低くて午前11時の時点で36.6度。ただ、鼻水・くしゃみ・軽い咳がでているのでコープへの買い物はオレ一人で行ってきた。明日のデイサービスも風邪の具合がどうなるか不明なので、お休みの連絡を入れておいた。今日からまた4日間、顔を四六時中、付き合わさなければならない。
ところで昨日、蜂谷師匠に同行してもらい林病院の林先生を訪ねた。和ちゃんの脳のCT写真を撮影するために。和ちゃんが同伴していない場で林先生と会話するのは初めてだったので率直に質問した。やはり、自分の息子が判断できないということは、症状としては重いとのこと。
ただし、いい表情をしているので、“感情面”では問題はないのでは? とのことでもあった。
変な話だけれど、朝、コープへ一人で買い物に行って、一人で飲むコーヒーはなんだか寂しい。
と言いながら昨日の夕食前、オレはまたまた爆発。和ちゃんがデイサービスから帰宅し、風邪の兆候が朝からあったので漢方の葛根湯を飲むよう差し出した。葛根湯は固形ではなく粉末の状態で1包々々になっており、その1包の口を切って渡すと手のひらに粉末を落とした。当然、舐めるようにしてしか飲めない。
カチン!
「なに考えとんなら? アホか! アルツハイマーの世話やこしょったら、ワシの方が先にお陀仏じゃがな。もっとシッカリせえ」
和ちゃんから発せあれるスミマセンがオレを動揺させる。どうにもならない。人間力不足を心底から痛感する。
“ノビノビアルツハイマー”か?

★11月30日
トラブッタ。というか、和ちゃんが怒った。
「私の方が気が狂てしまうわー」
と叫び、そして泣き出した。
発端は、和ちゃんが風邪気味なので電子体温計で熱を計ろうとした時だった。なかなか脇の下に上手く挟まらない。シャツの上にハイネック着ている。ハイネックの首のところから入れようとしたのだけれど難しい。とにかく、本人が脇の下にちゃんと挟まっているということが確認できないのだから。和ちゃんが自分で体温を計ることなど無理。
何度かオレも挑戦する。上手く挟まらないのでイライラしてくる。和ちゃんの歯磨きのときに、歯ブラシのブラシの裏に歯磨きのチュウーブを持っていったときからイライラは始まっており、言葉の暴力も出っぱなし。良くないことは理解しながらも止まらない。
そして、オレはあまりにもイライラするので和ちゃんの身体をハイネックごとググッと引いた。軽いので炬燵から、ひこずりだされるようになった。その時、和ちゃんは爆発。
泣きながら、ハイネックを脱ぎシャツ一枚になり、
「これでえんじゃろ」
と偉そうに言う。売り言葉に買い言葉。
「アホか? 自分でなんもできんくせに偉そうなことを言うな。アホウに浸ける薬は本当にねんかのお?」
ここから冷戦状態。といっても30分。和ちゃんがオレに謝る。
「もうあんな態度はしませんから、もう一度やって(体温を計る)ください」
切なくなる。人生、なんかとっても重い。オレがオレを嫌になることは度々だけど、慣れることなどない。
熱を計る。36.4度。
「和ちゃん。一緒にコープへ買い物しい行くか?」
「うん。行こうやあ。行こうやあ!!」
もう笑顔が湧きだしている。コープからの帰路、“我ら人生六十から”を一緒にハミングしながら帰った。
帰宅してテレビをON。クリスマスやら忘年会絡みの番組が飛び出してきた。オレには関係ない。関係ないけど嫉妬はする。自然と舌打ちをしてしまう。が、まあいいか。
今日も、和ちゃんは風呂は入れないでおこう。
では、これから昼飯の肉うどんを作るとするか。

★12月1日
いやあ、疲れた。
今朝、和ちゃんの熱を計ると36.4度だったので、コープから帰って風呂を沸かし、午後12時過ぎに和ちゃんを風呂に入れた。風邪気味だったので、もう先月になってしまうけど28・29・30日と3日間風呂に入れてなかった。熱はなかったのだけれど、“風邪気味”から“風邪ひき”にならないよう注意してのこと。髪の毛は8日間洗ってなかったことになる。幸い、今日は小春日和で暖かい。コンディション的には最適と判断。
身体と髪の毛は別の日に洗うようにしている。シンドイから。今日は両方を洗わないといけない。洗えるときにあ洗っとかないと、どうなるかわからない。髪の毛は油々してくるし、外見的にもベトッとしているのが一目瞭然。普段は最低、5日〜6日間の間隔で洗っている。
しかし、気を使う。それ以上に、アルツハイマーの和ちゃんを風呂に入れるということは体力と忍耐力勝負だ。
いったい、他家ではどんな風にして風呂に入れてるのだろう? 下湯なんかもちゃんとしてくれないし、肛門付近にウンコが付着していたりもするのだから。
夏は夏でのぼせそうになるし、冬は冬でこちらの血圧にも影響するし。立ち上がったり座ったりの姿勢を繰り返してるとクラッとしたりもしてドキッとしてしまう。
ところで昨日の夕食後、和ちゃんが入れ歯を紛失した。とにかく、和ちゃんが歯を磨くときには側にいないとしっぺ返しがくる。結局、一番上に羽織っている綿入れのポケットの中にあったのだけれど、あちらこちら探しまくった。
事件。じけん。ジケン。
いろんな事が起こりまくってくれる。
とはいえ、とうとう12月に突入してしまった。コープでは、みかんの箱入りが売り出されていたけれど、オレなんか先のことなど考えていられない。今願うのは、風呂に入ったので和ちゃんが湯冷めなどして風邪を悪化させないことを願うばかりだ。
アルツハイマーでその上に病気にでもなられたら、在宅介護などできるのだろうか? 皆さん頑張ってるみたいだけれど、オレは?
あまり先を考えてもしかたないか? いつも、今が勝負なんだから。

★12月2日
「なんしょんならコリャー!! 口から出せえー入れ歯」
思わず大声がでた。怒ってこうなったのではない。ビックリして突発的にガナッテしまったのだ。
今朝、和ちゃんには歯磨きしたあと、部分入れ歯を出すように言った。“部分入れ歯用ポリデント”で汚れを落とすために。
ポリデントを入れたぬるま湯に約10分間、和ちゃんの入れ歯を浸けておいた。和ちゃんの部分入れ歯は上下二つ。上のはかなり大きく歯だけで10本ほどある。下は1本だけ。部分入れ歯というのは金具が付いており、その部分も殺菌するらしい。
で、10分が経過し、入れ歯をきれいに水洗いした後、和ちゃんに入れ歯をはめるよう上下二つを渡した。和ちゃんは時々、入れ歯のはめかたが分からなくなるのだけれど、今朝はスムーズに上は納まった。そして下のヤツ。和ちゃんは手のひらに乗せ、薬を飲み込むように口の中に放り込んだ。
誰でもビックリすると思う。あのまま放置していたら飲み込んでいたに違いない。恐ろしい。
「ゴメンゴメン」
和ちゃんは言うけど、これからも、どうせ何度もやるはずだ。歯磨きするときでさえ目が離せない。参った。飲み込まれるよりは、下の部分入れ歯だけは外しておいた方がいいのかも? 飲み込まれたら金具も飛び出しているし厄介なことになる。
しかし、こういう問題は誰に相談すればいいんだろう?
 歯科医? 精神科医? 介護職? でも、それぞれにそれぞれの立場からの方向性を指導してくれるのだろうし。オレが逐一、確認していなければならないのかな? 入れ歯の装着を。
さて今日は、かなり歩いた。コープへの買い物を30分早め、1時間半コースでお出掛けしてきた。まだ鼻はシュンシュン鳴っているものの、熱は平熱だし歩行距離を多くしてみた。あと一ヶ月で76歳になるにしては、足腰はしっかりしている。
昨晩、和ちゃんの寝顔を10分ほど観ていた。安心しきって眠っている和ちゃん。最近は静かな夜が続いている。

★12月3日
「ウンコが出たよ」
午前5時頃、和ちゃんはオレの耳元で小さな声で申告する。オレは眠いので、軽く手を上げて了解の意味を知らせる。そして30分後。オレも小便でトイレへ。
ウヒャー!!
我が家のトイレは“汲み取り式”。便器から便漕までは少し長さがあり、その側壁に和ちゃんの噴出した便がへばりついている。3個出たとのことだったけれど、へばりついているのは1個。
しかし、デッカイ。極端ではなく、オレの拳大に近いようなのが。よくこんなのが、和ちゃんの肛門から出てくると思う。これが3個。スゴイ!! 確か、5日間出てなかったのだ。
オレは感心しながら、また羨ましくも感じながら和ちゃんが残した、文字通りの“大便”の始末をする。こういうときの便の始末は汚いことは汚いけど、“嬉しい”という感情が優先する。
「良かったなあ、和ちゃん」
デイサービスへは元気に出発していった。4日ぶりの解放となった。

★12月4日
昨日、岡山からの帰り、コープに寄ったら和ちゃんの昔からの知り合いに会った。彼女は、もちろん和ちゃんを覚えているけれど、和ちゃんの記憶に彼女は無い。いつもは和ちゃんと一緒のときに出くわしていたのであまりオレは会話しなかったのだけれど、昨日はむこうから声を掛けてきた。和ちゃんの調子を聞き、
「西大寺にも、お母さんのよなな人をあずかってくれるええ施設ができたんよ。一回覗いてみたら?」
オレがどういう立場で仕事をしているか彼女は知らない。少し話をあわせて、施設入所は考えていないことを説明。あまり愉快ではなかった。
で、昨日オレは自身の自律神経失調症診察のため市民病院に行っていたのだけれど、オレの親父も世話になった中津先生によると、やはり痴呆症の人で入れ歯を飲み込んでしまう人は少なくないとのこと。
和ちゃんが通っているデイサービスの谷口さんに聞いても、同様な回答だった。やはり、部分入れ歯を外させた方がいいのだろうか? 中津先生からは、飲み込んでも大事には至らないとの説明。でも、いずれ飲み込んでしまうことになる確率が高いとも。
小雨の中、今日もコープに行って来た。1時間コース。和ちゃんに問いかける。
「なかなか勢いのある足取りじゃがな。足腰に不安はねえなあ。倉敷あたりまで旅行できるで!」
「せえでも、頭の方がなあ?」

★12月5日
和ちゃん。今朝も元気にデイサービスに出陣。今日は迎えの鹿村さんに、和ちゃんの宿題を渡しておいた。カーディガンの一番上のボタンが外れており、それをむこうで付けさせてもらうようお願いした。ただ、和ちゃんは最初嫌がった。
「私が家でなんもしょうらんようなが」
たぶん、キッチリとボタンを付けて帰ってくるだろう。
昨夜、親父の姉にあたる叔母に電話を入れておいた。広島の福山にいるのだけれど、叔母ももうじき80歳。電話が遠いらしく何度も聞き返してくる。和ちゃんの近況報告。叔母の名前も記憶にないことを告げると、やはり驚いていた。
叔母も独身で生きてきており、一番の近親者はオレということになる。叔母はプロテスタントの熱烈な信者で、死後は教会で面倒みてもらうと以前聞かされた気もするけど、もしものことがあれば見て見ぬ振りはできないと思う。
“思う”となるのは、いろんな意味でサポートできるか分からないからだ。親父も看取った。和ちゃんも見守っている。正直、介護などやりたくない。ただ、オレには自己嫌悪が人一倍強い気もする。
だから、叔母には元気でいてもらいたい。
今日の日記は意味不明かな?

★12月6日
昨日、和ちゃんはデイサービスから帰った途端、自慢げに吠え、ビニール袋をオレに差し出した。ビニール袋の中には、宿題でお願いしたボタン付けのカーディガンが入っている。
「私一人でボタンを付けたんじゃからな」
元気でなによりだ。
オレの方は、あちらこちら岡山方面を歩き回った。先日、和ちゃんの脳のCT写真でお世話になった林先生の写真を林病院まで届けた。
正直、以前は精神科の病院というと偏見もかなりあったが、今はお隣さん気分だ。個人的には、オレ好みの職員さんも多い。もっとも最近、女性の多くが美しく見えてしまうのだけれど。自律神経失調との因果関係はないと思うのだけれど?

★12月7日
 今朝も、和ちゃんは元気にデイサービスに出発した。家を出る前、“我ら人生六十から”を楽しそうに歌っていた。今、和ちゃん一番のお気に入りだ。というわけで昨晩、歌いやすいように漢字をひらがなにしたり、少し色づけなどををしてプリントアウトした。それを今朝、お迎えの鹿村さんに渡しておいた。
漢字はかなり読めないようになってきている。でも、それはそれでいいと思う。
昨夜、和ちゃんの安らかな寝顔を見ていてそう思った。国語も算数もどうでもいい。安心して生きていてくれれば。
これはオレ次第かもしれないけれど?

★12月8日
今、午前11時10分。コープから帰宅したばかり。今日は寒い。まだまだ寒くなるとの予報。小雨降る中、1時間コースより10分ほど距離を延ばした。なかなか歩ける。背中に背負わせているバックの中には200ミリリットルのペットボトル。2Lを背負っていても平気で歩ける。たいしたものだ。
コープに行きがけ、久しぶりに右と左を聞いてみた。どういうわけか、今朝は右左を躊躇なく正しく答えた。オレはビックリ。
「どしたんなら和ちゃん。あてづっぽじゃあなさそうなのお?」
「そりゃあそおえ。ちゃんと勉強したんよ。どうしてかゆうたらなあ、だいぶ前にお風呂に入っとるとき、『右向け・左向け』とかゆわれれて、私が分からんもんじゃからものすごう怒られて、顔まで叩かれて。顔に痣までできたんじゃからホンマ。もう、叩かれとうないもん」
参った。完璧な創作。確かに、オレはあの時怒った。怒鳴り声を上げ、風呂椅子を蹴飛ばしもした。しかし、和ちゃんの顔など叩いていない。親父の失敗を繰り返すわけにはいかない。
「和ちゃん。しかし、それはワシで!」
「違うよ。あんたがそんなことするわけないが。意地の悪い子がおるんよ」
「せえでも、そんな意地の悪い子が、和ちゃんを風呂に入れてくれるか?」
「おかしいなあ? そお言われてみりゃあ、そおじゃなあ?」
和ちゃんは混乱している。昔から大袈裟な表現をする人ではあった。
ところで、昨日はデイサービスで“我ら人生六十から”を何回か歌ったそうだ。それを嬉しそうに語ってくれた。伸びた爪もきれいにカットしてくれていた。ありがたい。

★12月9日
予報では、明日の朝から3日間ほど最低気温が氷点下近辺らしい。今、我が家では炬燵だけ。石油ファンヒーターもこの2年間使用していない。今年は使いたいのだけれど、オレの血圧対策も含め、恐くて使えない。今朝も、部分入れ歯を消毒している最中のポリデント入りの水を飲もうとしていた。薬と間違えたらしい。寒さ対策を考えなければ。
オレもインフルエンザの予防接種しとこうかなあ? 4000円。高い! でもなあ、オレが動けなくなると和ちゃんはアウトだし。悩みは尽きない。

★12月10日
寒い!!
今さっき、米を洗って夕飯時のセットをしたばかり。今日の夕飯は、パック詰めのおでんに決めた。とても、一つ一つ手をかけてはいられない。
そして、新しいポットを出し、インスタントのカフェラッテを飲みながら書いている。石油ファンヒーターにお世話になるかどうか? は、この2、3日の状況を観察・体感して決めよう。
和ちゃんはデイサービス。しかし、今日オレは家にいる。なんか、ゆっくりしたい。今朝も和ちゃんがズボンの上にズボンを重ね着していたので少々イライラ。でも、いい気分でデイサービスに出陣してもらいたいので、一緒に相撲ごっこをする。和ちゃんは大喜び。
和ちゃんが喜んでいると、素直に嬉しいオレがいる。
今日も風呂は中止。

★12月11日
いやあ寒い!! 今朝、岡山市内の最低気温は0.3度とか。暖房器具なしの部屋で日記を書くのはキツイ。手がかじかんでいる。PCの反応も幾分、鈍いような気がしてならない。
今朝、和ちゃんとの会話はウンコから始まった。とにかくデカイのが出たらしい?
「ウンコ出たよ。ウーン? 今日のは一個だけじゃけど大きかったなあ!!」
親指と人差し指では丸められないほどの太さに、親指と人差し指では表せないぐらいの長さだったらしい。今度はキッチリ計るとも言う。どうやって計るのか? 笑わせてくれる。
「クソアホウ!」
些細なことから怒鳴った。すると、和ちゃんが筆記し始めた。
「なんしょんなら?」
「『クソアホウ』ゆわれたから、書いておくんよ」
しかし、そこには
“めそあほう”
となっていた。ひらがなも段々に書けなくなっている。でもなあ、別にひらがなが書けなくてもいいような気がする。
というのも、ウンコの話題の後、オレたち二人はここに記せないような悪口で大笑いしたのだから。和ちゃんは咳き込んでまでしていた。
これでいい。

PS
今、午後3時半。今日も風呂に入れるのはよそう。寒すぎる。湯を沸かして、今さっき顔だけ洗わせた。
ところで、どうかな? とも考えたが、コープに予定通り買い物に出掛けた。家で留守番しているより、寒くてもオレと一緒にいる方がいいと言う。泣かせる台詞だけど、重い。
行きがけ、寒いので軍手をさせた。隙間から風が入ってくると言う。どちらにしても必要なので、コープでかなり子供っぽい手袋を780円で買った。もちろん和ちゃんと一緒に決めた。以前だったら絶対に拒否したはずの絵柄入りだけど、またまた泣かせてくれる。
「あんたが買ってくれるんじゃったら、なんでもええよ」
コーヒーを飲みにいって、そこで和ちゃんに手袋をはめさせた。可愛くてよく似合う。和ちゃんも嬉しそうに両手を拡げてオレに見せる。
「ありがとうございました」
オレの心は夕立状態。そして、なんでもっと早くからこういう関係になれなかったのか? 心が痛い!!
午後、海苔巻きの昼食後、両備プラッツまで和ちゃんの冬物靴下を買いに行く。コープとプラッツで、単純計算しても4キロは歩いたことになる。
「和ちゃん、疲れんか?」
「疲れるもんか。あんたと一緒じゃから」
「頭も疲れなんだらえかったのになあ?」
「どうしようもねえらしいよ」
この人は、本当に憎めない。そして、和ちゃんの子で良かったとしみじみ思う。
今、和ちゃんは“あいうえお”の練習をしている。

★12月12日
昨夜、というより今日になった深夜、背中が冷えて眠れず炬燵に布団をセットしなおし再度眠りに就いた。しかし和ちゃんの眠りは深い。
そんなわけで、オレの今朝のご機嫌は悪かった。そこへ和ちゃんのトンチンカン。自分でやろうという姿勢はいいのだけれど、今朝もデイサービス出発前に脱がなければならないモノを着、着なければならないモノを脱いでいる。
「アホウ! ワシが指示する前に勝手にするな。自分でできるんなら、これから全部自分でせえ」
和ちゃんは、なんで自分が叱られているのか分からないで困惑。着せ替え人形のように、オレは着せ替える。着せ替えながら抱きしめる。和ちゃんは何事もなかったかのようにクスグッタそうに身体を捻る。そして大笑い。まあ、“良し”としよう。和ちゃんもオレも、完璧なんて無理。
そういえば、昨夕は和ちゃんと大爆笑。特大ウンコの名残が和ちゃんのパンツに付着しており、それを脱がせ股間を洗ってもらったのだけれど、2階から1階の風呂まで下半身はスッポンポンで移動。その姿があまりに可笑しいのでオレがまず大笑い。そして和ちゃんも自身の下半身を見て大笑い。アルツハイマー家庭では、どこにでもある光景なのだろう?
さて今朝、岡山東商高校の後輩という男性から電話があった。吉備人出版ホームページに連載している“岡山東商業高校野球部物語”は本にならないのですか? という問い合わせ。原稿用紙700枚分を400枚まで削るということで出版予定しているが、和ちゃんの見守りは予想以上に厳しく、集中できないのいでその作業ができないままでいる。残念。
とはいえ、どこかで読んでくれている人がいるのが嬉しい。なんとかしたいのはヤマヤマなのだけれどネッ。
そうそう。和ちゃんは、和ちゃん唯一の仕事である“ゴミ捨て”を今朝、完璧にやりとげた。これだけは絶対にできるとのこと。力強い??

★12月13日
今日も調子良くコープへの1時間コースを済ませて帰宅。冷んやりとはするけれど、空は透きとうり天気もいいので和ちゃんと一緒にいる部屋を掃除にかかった。
和ちゃんは気を利かせ、オレの枕を掃除機がかけやすいように別の位置へ置く。置いた場所が悪かった。そこは普段(めったに掃除はしないけど)掃除するときもほとんど掃除しない棚の上。枕はほこりまみれ。
「アホウ! いらんことすな。そこへジーート座っときゃあえんじゃ。ああああー腹が立つ。もう少し、しっかりせえ!」
和ちゃんが下を向いて涙を流している。
「泣いたってどうにもならんで。泣く前に考え」
「スミマセン」
今、パソコンに向かいながら後悔。こんなことの繰り返し。オレの家では、これが日常? 日常であり“普段どうり”。
和ちゃんのご機嫌伺いに行こうかな!
今朝も和ちゃんはウンコが快便。さいさきは良かったのになあ。

★12月14日
「ウンコが付いたパンツゆうなあ、一回手動で湯洗いしとかんと洗濯機だけじゃあシミが残るんじゃのおホンマに。力がいるで!!」
和ちゃんのパンツを干しながら、オレはこんなことを考えている。情けないやら切ないやら。
“46歳・日本男児”の中で、こんなことに悩みながら日々生活している方々はどのくらいいるのだろうか? まあ、1%どころでなく、0.1%もいないだろうな。もっとも、育児経験のある男性は別だろうけど。でもなあ、育児と介護じゃ、まるっきり環境設定が違うもんなあ。
育児だと、叱っても未来へ繋がる。介護の場合、叱るということは意味的に即“怒る”になるからなあ。育児の場合は教育的指導。アルツハイマーの和ちゃんを叱っても、学習効果を期待できるわけではないし。
叱る=悪
オレは、尊敬するマザー・テレサのような偉人じゃないし。ヤレヤレです。

★12月15日
今朝早く、在宅介護サービス・サルピス所長の松平さんより電話あり。明日の林病院送迎について。なかなか人員配置に苦労している様子。日曜日なのにご苦労様です。
で、そういえば昨日の朝、和ちゃんが面白いことを言った。オレと和ちゃんは、毎朝NHKの連続テレビ小説“まんてん”を楽しみにしている。ただ、和ちゃんがデイサービスの日は8時20分にお迎えなので、8時15分から玄関あたりに待機する。ということは、“まんてん”が観られない。そこで和ちゃん。
「昼からの再放送を観りゃあええが!」
とのご指摘。和ちゃん、良くご存じで!!

★12月16日
今日一日の流れを記してみる。
和ちゃんは、唯一自分に任されている仕事、ゴミ捨てに午前7時に突撃。この時、オレはいつも不安になる。ちゃんとゴミ捨て場に捨てたか? ちゃんと帰ってくるか? 今朝も大丈夫だった。
9時少し前。在宅介護サービス・サルピスの越智さん、林病院までの送りのため到着。約30分、越智さんと会話を楽しみながら林病院へ。
9時半少し前、林病院着。受付で手続きをしていると蜂谷師匠の到着。診察風景などを撮影してもらうため約束しておいた。なにやら風邪気味らしく、申し訳ない。蜂谷師匠も“和子さん”“和子さん”と親しくしてくれ和ちゃんも蜂谷師匠が大好きだ。
9時半少し過ぎ、担当医の林先生の診察が始まる。いつも優しく接してくれて、和ちゃんは“病院”であるにもかかわらず行くのに嫌な顔をしない。優しく接してくれる人を記憶しているケースが多いような気がする。
血圧を測定した。高いと想像していたにもかかわらず、140−78で、これなら病院で測っていることを考慮すればGood。和ちゃんも饒舌になっている。
診察後、同じ敷地内の操山在宅介護支援センターへ。ケアマネジャーの長谷川さんから少々の質問を受ける。和ちゃんに緊張感はない。
えーーーと、なんだったか? 提出書類に本人署名の欄があり、和ちゃんに書かせた。書く場所を把握させるのが難しく、いつもサイン一つに10分近くが必要となる。
“の田和子”
和ちゃんはサインした。
次に、在宅介護サービス・サルピスに向かった。蜂谷師匠の車で3分。所長の松平さんと懇談。松平さんも和ちゃんと呼ぶ。
そして蜂谷師匠の車で、裁判所近くのギャラリー・グロスへ。ここでコーヒーを飲んで、天満屋まで歩いて行き、ここからバスで西大寺まで帰った。西大寺到着後、両備プラッツで昼飯と夕飯の弁当を買う。雨がポツポツきだしたので、和ちゃんとオレは速歩状態。和ちゃんはシッカリ歩く。
「和ちゃん、大丈夫か? えらかったら言ええよ」
「えろうなんかないよ。最近鍛えとるからなあ!」
今日も、蜂谷師匠にいい写真を撮ってもらえたはずだ。蜂谷師匠が撮ってくれた和ちゃんの写真は、今のオレにとって宝だ。写真の力。ヒシヒシと感じている。オレのような人間でさえ、優しくなろうとする。本当に感謝。
今、午後3時。和ちゃんは眠っている。お疲れさま。

★12月17日
和ちゃんは元気にデイサービスに出発。暖房器具といえば炬燵しかないのに、今のところ本当に元気そのものだ。ただ、あまりに元気なのも少々困る。やたら、あちらこちらからモノを引っ張りだし、片づけをちゃんとしないからだ。
今朝もオレは爆発。デイサービスに行く前、気持ちよく送ってやろうと心掛けてはいるのだけれど、ダメ。怒鳴ってしまう。
「あんた、そんな大声出しょったら近所に風が悪いが!」
どこまで正常なのか? こっちの脳細胞まで破壊されそうだ?

★12月18日
オレの右手親指と人差し指の荒れが酷い。人差し指は、爪まで割れ始めてきた。水絆創膏で張り付けているものの、やはり洗剤等の影響が強いのだろう。入れ歯洗いから、とにかく水仕事が多くなった。些細な痛みだけれど、イライラが募る。
昨日、吉備人出版に寄ってきた。社長の山川さんに会い、“岡山東商野球部物語”を本にする件は、ひとまず様子見にして欲しいとお願いしてきた。アルツハイマーの和ちゃんと四六時中一緒では、700枚の原稿を意味ある400枚に編集することなどできない。集中できないのだ。
この物語をなんとか本にまとめたいと願っている筆頭はオレだ。なんとしてでも世の中に出したい。しかし、今の現状では無理。確かに何度かチャレンジしてみた。ただ、チャレンジしている最中に、和ちゃんにトンチンカンなことをされると、普段以上に腹が立ち爆発してしまう。今、和ちゃんのことが最優先。この結論はいたしかたない。
午前9時半。そろそろ支度をして、和ちゃんとコープへ買い物に行こう。

ps
コープから帰宅。昼飯までに時間があるのでパソコンに向かっている。
というのも、帰宅途中にあるご婦人に声を掛けられた。そのご婦人は自転車から下りて、こう言った。
「新聞で拝見しました。ようやってあげられますなあ」
そして、一礼されて自転車に乗りその場から立ち去られた。オレたちが新聞に掲載されたのは敬老の日。かれこれ3ヶ月が経過している。印象深かったのだろう。もしかして、オレたちと同様な境遇を経験されているか経験者の方かもしれない?
ありがとうございました。

★12月19日
今朝はほとんどトラブルもなくデイサービスに出掛けた。小雨降る中、傘もささずお迎えの車に直行。
さて、和ちゃんの意識の中には“あの子”の存在がある。学生服を着て、学生帽を被っている中学生。この“あの子”、実は泥棒。
「また“あの子”が来て、持っていった」
髪を整えているとき、ヘアピンがないと“あの子”のせいになる。部屋を散らかした後も、
「ありゃ! “あの子”が来たんじゃ」
和ちゃんに言わせると、“あの子”に随分といろんなモノを盗られたらしい。先日も、和ちゃんはヘアピンを“あの子”に盗られないために引き出しに入れた。そしてヘアピンが必要となったとき、ヘアピンを隠した場所が分からない。分からないというか、自分があると思いこんでいた所にない。
「ありゃ! また“あの子”じゃ。どうにもならんなあ」
まあ、オレが盗ったと言わないだけでも良しかな?

★12月20日
しかし、もう12月20日か。7月29日にアルツハイマー宣告されて以来の約5ヶ月。心の持ちようのギアチェンジしたつもりだけれど、なかなか上手くはいかない。凡人だから仕方ないか?
今、午前9時15分。和ちゃんはワイドショーを観ながら、5年前の電話料金を見て悩んでいる。どうやって支払おうか? と。和ちゃんの悩みは尽きない。
オレの悩みも尽きないなあ! パソコンの周囲はほこりだらけ。掃除する気力はない。これからコープへ一緒して買い物をし、和ちゃんの好きな肉うどんを作ろうか? 午後は和ちゃんの髪を洗おうか? そんなことをしていたら疲れ果て、オレは風呂に入る気がなくなるし。2日入ってないから入りたいし。
オレの悩みなんていうのは今、こんなもんだ。中米のエルサルバドルで、兵士のパトロールに同行取材した頃が懐かしい。
人生楽ありゃ苦もあるさ、ってか?

★12月21日
昨日、デオデオよりパソコンが修理されてきたとの電話。早速、今日受け取りたかったのだけれど、あいにくの雨模様。この時期にしてはまとまった雨。車に乗れないオレは今日は諦めた。とはいえ、明日と明後日は和ちゃんと一緒だし、パソコン受け取りは来週の火曜か?
しかし、なんか昨夜は眠れず、今日はシンドイ。和ちゃんはデイサービス。一日寝ていたかったけど、長靴を履いてコープへ買い物に出掛けてきた。昨夜は和ちゃんが眠る前に熱いお茶を欲しがり、オレも一緒に飲んだのが悪かったか? 和ちゃんは頻繁にトイレに行くし。ただなあ、和ちゃんはトイレに起きても床に入ると直ぐに眠れる人だから、疲れはない。今朝も元気一杯だった。
ホントにほんとに、雨音を聞きながら一人、箱酒を飲みながらパソコンに向かっているオレがここにいるんだなあ。
46歳。おとこ。独身。
やっぱこういう日は、精神的にもキツイなあ。そういえば最近、泣きが入ってばかりのような気がする。
基本的にオレは、このクリスマスウィークあたりは1年で一番嫌いな時期だし。

★12月22日
今日の昼飯は和ちゃんの好きな肉うどんを作った。基本的には、洗い物が残るので作りたくはないのだけれど、オレの不注意から和ちゃんにスッテンさせてしまったので罪滅ぼし。
では、どういう状況下でスッテンしたかといえば、コープの駐車場には高さ13センチ・幅10センチほどの車止めがあり、その上をバランス感覚を確かめたいために歩かせた。もちろんオレは和ちゃんの手を握っている。
しかし、和ちゃんはそこから滑り落ち、右膝を打ち付けた。いつもは大丈夫なのに、やはり前日の雨の名残が影響したのだと思う。ズボンとズボン下を下から上げると、血が滲んでいる。買い物をして直ぐ帰り、塗り薬を塗った。幸い、ダメージはあまりなく、テレビを観ながらケラケラ笑っていた。明日になって、腫れていなければいいのだけれど。
とはいうものの、オレは時々、和ちゃんにバカにされているのでは? と考え込んでしまうことがある。今日もそうだ。お茶を飲みたいと言うので、オレがペットボトルを持つと、コップがないと言う。コップは目の前のある。それでも、あちこち探している。
「アホか? 目の前にあるがな」
それでも分からない。オレはコップを取って差し出す。
「これがコップじゃがな。ワシをバカにしとんか? ええかげんにせえよホンマ!」
和ちゃんから思いがけない返事。
「こうゆうのをアルツハイマー言うらしいよ」
なんかなあ!?

★12月23日
アルツハイマー日記の取材を受けるため、和ちゃんと岡山までバスで往復。岡山でも少々歩き、買い物をして帰宅。今さっき、風呂に入れた。疲れた。本当にお疲れ。